1949年にブリヂストンサイクル工業が創立されて以降、
初めての自社製エンジンを搭載したのが「ブリヂストン90」

1954年にはブリヂストンタイヤ(株)が中島飛行機の生産で
倒立した自転車用エンジンをBSモーター41に積み販売を開始した。


 

空冷2サイクル単気筒
ボア・ストローク 50mmx45mm 88cc
最高出力 6.7ps/7.000rpm
最大トルク 0.8kgm/5.000rpm
最高時速 95km 価格¥76.000


僕は北海道に移住してからバイクの数が増え、その中でもブリヂストンのオートバイは5台所有していた。
それがだんだん少なくなり最後まで所有していたのがBS90だった。そしていつかそれも手放してしまった・・・

その後数年たち、「北海道ミーティング」と言う毎年富良野で開催されているイベントに参加していた時
その最後に手放したBS90その物が来ていたのだ。ビックリした、そして無性に懐かしくなった・・・

オーナーを探し出し入手経路を聞くとやはり元は旭川に有った物だと言っていた。
僕が乗っていた時にサイドカバーに貼っていたシールがそのまま剥がされずに付いていたのですぐに分ったのだ。

旭川の友人が同じBS90を持っていて「少しずつ直して乗るんだ」と言うので僕もいつかはまた乗りたいと思っていた。

店舗を旭川の郊外の西神楽へ移し、念願のライダーハウスも作り、小さな畑も作り、地元の農家の人達とも少しづつ交流を持ち
そんな日々の中、珈琲を飲みに来た近所の人と野菜や米作りなどの話を聞いていると
「マスターはブリヂストンのバイク興味有るの?」と聞かれ、またビックリした。

「何それ、どこかに有るの?」と聞くと、「うちの向かいの爺さんがたまに畑の中乗ってるんだけど売りたいって言ってたよ」
と言うのだ!何と今でも納屋から引っ張り出して乗ったり磨いたりしてるらしい・・・

「それ欲しい!お願い、頼んでみて」と言った。その日からブリヂストンの事が頭から離れず、2日後に電話して「爺さんに聞いてみた?」
と聞くと「今日は居ないみたいだ」と言われ、これは黙って待つしかないのか・・・と思ったが早く乗ってみたくなってしまった。

そして次の日、お店が定休日だったので今日中に連絡が取れればいいなあと待っていたけど中々来ない・・・
せっかくの休みだから時間がもったいないので美瑛の白金の方へ日本ザリガニの生息調査へ向かった。

そして現地に着いたとたん携帯が鳴り、「マスター何処にいるの!持って来たのに・・・」と、いきなり運んで来たらしい。
「すぐ帰るから待ってて!10分で帰るから!」   10分じゃ帰れる距離じゃなかった・・・




飛んで帰ってみると駐車場で2人が待っていた。そしてバイクも降ろされていた・・・

正真正銘のワンオーナー車、「新車で買って乗ってる時以外は外に置いていた事は無い」 と爺さんが言っていた。
うそじゃ無いのは見て良くわかった。

  

純正のミラー、タンデムシート、キャリア、そして当時のままの水色の工具袋

 

陽に当ててないからプラスティック製のエンブレムも反り返っていないし、ひび割れも無い。
メッキ類もボルトの一本まで錆びが無い。


さて、商談の時間だ。駐車場で爺さんに缶ビールを薦めた・・・

ところが爺さん、コーヒーの方がいいと言う、一瞬作戦は失敗したかと思う
それからバイクを買った当時の話などが始まり、いよいよ「いくらで譲ってくれますか?」と問うと、爺さん
「あん時、確か8万で買ったから(北海道は割高になっていた)5万くらいでどうだ?」と凄い計算をする・・・
今から40年も前の事なのについ最近のように語ってる・・・

これが想い出のブリヂストンでなければそんな話は断る所だが、爺さんが大事にしていた事や程度の良さで
「じゃ売ってください」と言ってしまった。

その晩、ずっとスーパーハウスの中で眺めていた・・・